土肥 安希乃
オーストラリアに着き,バスに乗ると,すぐに目の前には一面の自然が広がった。どこまでも続く草原は,小学生の
時に家族と行った北海道の大地を思い出させた。しかしそれは,確実に北海道とは違う。その何倍も広大な,私の
人生で最大の自然だと気づいた。この旅行中,ずっと続く,車窓からの変らない緑を眺め,その巨大な自然への感
動がおさまることはなかった。
この修学旅行で一番心に残ったのは,ファームステイだった。家にいたのは,ホストマザーのデルと,子供のジェ
イミー,ジョン,ジェニー,ワニタ。男の子が二人,女の子が二人の四人兄弟だった。初めはあまり打ち解けられず,
一日目の夕飯は,会話のない静かな時間になった。その後トランプをして,少しだけ仲良くなってから,その日は早く
寝た。
翌日,ワニやカンガルーや鳥などがいる,ちょっとした動物園のような所へ連れて行ってもらった。そこで,何匹も
のワニを見学し,カンガルーや鳥に餌のパンをあげたり,蛇を首に巻いてみたりした。その後,大きな公園の池で,
パンの余りを池にいた鳥やカメにあげた。そんなことをしている間に,いつの間にかみんなでパンの投げ合いをして
いた。その頃から,もう壁を感じなくなった。それから,スーパーマーケットへ行った。オーストラリアの人は,みんな何
日分かの食料をまとめてたくさん買っていた。
家に帰って昼食をとり,その後みんなで外で遊んだ。広い草原をみんなで走り回り,転がり回って,くすぐり合ったり
,みんなと汗と草まみれになりながら日が暮れるまで遊んだ。夜もまたトランプをしたり,肝だめしみたいなことをした
り,もう前日のような緊張はどこにもなかった。本当の兄弟になれたような気がした。ずっとこんな時間が続けばいい
のにと思ったが,別れはあっという間に訪れた。一緒に過ごした時間はほんの少しだったのに,別れは本当につらか
った。
この旅行で,オーストラリアの動物や文化に触れられたことはもちろん,広大な自然やのんびりとした人の温かさ
に触れ,自分の中で色んなことを感じることができた。何かに追われる毎日から抜け出し,シャープペンを握らずに
過ごしたこの一週間で,学校や塾では教われない大切なものを得た。そして,いつも都会にあこがれていた私が初
めて,『こんな自然もいいな』と思った。街で買い物をするより,草原で走り回る方が,ずっとずっと楽しいことだと思っ
た。ドルに換えたお小遣いの三万円は,半分も使わずに余らせた。お金でモノを買わなくても,もう充分だった。